さらばビキニよ
大暑の日、晴天にめぐまれ洗濯がはかどる。
朝、食パンを切らしていたので牛乳を一飲みし、近所のパン屋へ行こうと決意。
昼すぎまでは涼しい部屋も、夕方になると西日が差し込み地獄のような暑さになる。
それまでしばし出かけることにした。
パン屋の前に果物屋さんでカットフルーツを食べる。メロン、あまり甘くない。水分補給のつもりでぱくぱく食べた。
パン屋ではチョコフランスを求めていたがチョコパンしかなかった。もちもちの生地である。わたしは固いフランスパンに固いチョコレートが挟まっているやつが好きなんだ…とやや拗ねる。
電車に乗ると、夏を体現したような鮮やかな水色のワンピースを着たおばあちゃんや、3人組できゃっきゃと恋話で盛り上がる女子高生がいる。
その時その時ではわからない感覚は、遠くなるとわかるようになるらしい。かつて同じく高校生だったはずのわたしに、彼女たちはまぶしく、美しく見えた。
そして数十年後は、生き生きとしてオシャレに手を抜かない、元気で可愛いおばあちゃんになろうと思った。
そんなことを考えていたら目的地へ到着。
停留所で信号待ちをしている間、目の前のコンビニから出てきた男性が右手をさっと横へ振る。とたん、コンビニの前で座っていた二人の子どもたちがぱっと立ち上がり一緒に帰っていった。親子なのか…それとも兄貴と子分なのか…
江戸時代、長崎へ至るための道として整備された長崎街道は、今ではひっそりとしていて、石橋などにその痕跡を見るのみだ。
川の上流へ向かっていくと稲荷神社が現れる。鳥居を抜けると風情ある家が並んでいる。お稲荷さんがあちこちに。急な階段をのぼってお参りした。
暑さに負けずにずんずんと上流へ向かうと、市営のアパートがあり、さらにその奥には要塞のような石積みが突然姿を見せた。アパートのコンクリートとその石積みが、さっきまで囲まれていたはずの自然(川や植物)とあまりにもかけ離れていたので圧倒されてしまった。
大きさもさることながら、その古さにはとくに驚かされる。第一次長崎水道拡張事業にて明治37年(1904年)に完成したダムは、日本で二番目のコンクリート造水道ダムであるらしい。112年経ってもこの佇まいとは…奇しくもわたしが働く洋館と同い年である。愛着。
広場になっている公園にはベンチと木があるくらいで、閑散としていた。日陰もわずかにしかなかったので木陰になったブランコに乗りながらパンを食べた。
涼を求めて来たのもあったが、川へはフェンスがあったので立ち入れなかった。でもめげずに見るだけでも!と覗き込むとスッポンがいて、視線に気づいたか逃げてしまった。魚もいてちょっとした楽園みたいだった。
いよいよ暑さが厳しさを増してきた。
心も体もアイスコーヒーを求めていた。商店街の喫茶店を目指し15分ほど歩く。店に着く頃にはTシャツがしっとり汗ばんでいた。
アイスコーヒーを頼むつもりだったが、氷カフェがメニューに載っているではないか。
氷カフェとは氷状のコーヒーを牛乳で溶かしながら飲むもので、バス通り裏でも夏の定番メニューであった(マスターはよく自分用にシロップをたっぷり入れて飲んでいたな)。
ちょっと絵でも描こうかと思ったが、どうもボンヤリしてしまって、ただ道行く人を眺めることに終始してしまった。眠気が尋常ではなかった。まだ日は照っていたが、素直に帰ることにした。
案の定帰宅すると燦々と西日が入ってきていたが、諦めて寝てやり過ごすことにした。
びっくりするほど何も生み出さない一日だったが、十分な休息にはなったようだ。
明日からまた頑張ろう。
つづく。
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