幸せの仕事

新しい年がはじまった。
とても嬉しくなる出来事があったのだが、単にその場に出くわしてラッキー!ではなく、結果はもちろん喜びを生み出すまでの過程も含めてのことである。



年が明けて一週間が過ぎる頃、仕事を手伝ってほしいとの依頼があった。
内容は披露宴で流す新郎新婦のプロフィール映像の製作。特にわたしが任されたのは撮影に必要なセット作りであった。

依頼した新郎新婦は大のハリネズミ好きとのことで、飼っているハリネズミたちが二人の紹介をし、会場であるホテルへ駆けつける、というストーリーなのだが、そのシーンで使うセット、小道具、メインのホテルなどをハリネズミサイズで準備をすることになり、全く初めての作業だったのでどうなることかと思ったものの、いざ手をつけると不思議なことにあれよあれよと作業が進む。至難と思われたホテルは当初予定されていた平面のパネルから立体に変更、根っからの凝り性はますます加速し、内装や庭まで手掛けてしまった。常にハイテンションの状態で手を止めることなく作業を続け、9時間ノンストップでホテルを建設してしまった。



次の作業日にはパリ風のセットなどを作り、3日目にはオフィスのセット、山のセットやその他小道具などを作った。その日の夜はハリネズミたちの待つ現場へ向かい、いよいよ撮影となる。



まるで学園祭の準備のように、完成に向けてひたすら作り続けることがとにかく楽しく、たまにふざけたりしながら、こんな時間がずっと続けばいいのにと思ってしまうような幸福感を味わいながら作業をしていた。最終日を迎えることに少し寂しくもあったが、手塩にかけて育てたといっても過言ではないほど丁寧に作ったのだ、これで喜んでもらえないはずはない!と満ち足りた自信もあった。

撮影は新郎新婦の家にて。ハリネズミが夜行性ということで夜の撮影になった。喜んでもらえるかな…とハラハラしながらのセッティング。ハリネズミはもちろんだが可愛い雑貨も好きな新婦さま、大興奮であった。作った甲斐があったとしみじみ感じた。
さてハリネズミとのご対面。


ふむ、でかい

思ってたより、でかい


およそ体長20センチ、丸々として質量を感じさせる、本当にネズミの仲間かと疑うぽっちゃりさ、針は意外と痛くなく、のそのそと歩き、たまに舌をペロリと出す。
か、可愛い!!!
はて、せっかくセットを作ったもののサイズは大丈夫か!?



幸い、用意していたブリキのバケツに入らなかった程度で、他のセットへの影響はなかった。
ハリネズミたち(出演は4匹)はせわしなく動き回りつつも、しっかり演技をしてくれた。

撮影が終わり、片付けを終えて挨拶すると、二人は心から感謝の気持ちを述べてくれた。これまでの準備も、当日流した汗も全てこの瞬間のためにあったんだと思った。
帰り道、ひたすら感嘆の声しか漏れなかった。やりきった感とこの上ない二人の幸せを共有できたことへの感嘆だった。これから二人が歩む道が光かがやく素晴らしいものになることを祈っている。

結婚という人生の節目に立ち会える、とても幸せな仕事だった。
今年はいい年になりそうだ。


つづく。

新年度、無職

日々のこと、暮らしの中のもの

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